「マンションの建替えについて」をテーマに意見交換
9月1日行われた9月度横浜市緑区のマンション管理組合サポートセンター【交流会】では、マンションの建替えのプロセスや課題について意見交換が行われました。
マンション建替え事業の全国での実施状況は、2013年現在までに工事完了済み183件、実施中24件、実施準備中11件と全部併せても累計で220件程度に留まっています。
その理由としては、建替えを可能にする条件として
1.容積率に相当な余裕があること
2.利便性が良くて建替え後、余剰部分を売却出来ること
3.住民の合意(単棟型の場合は、集会において区分所有者及び議決権の各5分の4以上の賛成が必要)が得られること
といった3つの条件が必要であり、現状としては、ハードルが高い状況になっています。
しかしながら現在、マンションは全国に約590万戸ありこのうち1981年以前に建てられた旧耐震基準の住戸は106万戸を数え、さらに築30年を超えるマンションは118万戸で、今後毎年10万戸ベースで築30年を超えるマンションが増える事を考えると建替えの問題は、マンション居住者にとって大変重要な課題と言えます。
まずマンションの建替えが必要となる時期、マンションの寿命はどれ位かについては、諸説がありますが、適切な維持管理が行われていれば、以前に言われていた50年建替え説よりずっと長い70年から100年位を視野に入れられるのでは無いか。又、各マンションの立地や建築構造、建築設備等固有の条件、グレード等を専門家を交えて検査、検討する中で建替え時期を設定することが重要との意見がありました。
次に高経年マンションでは、住民が独自にその専有部分のリフォームを実施するケースが多く、リフォーム直後に建替え決議が採択され、折角のリフォーム投資が無駄になるケースがあります。このような住民間でのトラブルの発生を未然に防ぐ為に各管理組合において重要な事は、各マンションにおいて長期修繕計画を作成、見直しを実施する際、建替えも視野に入れたマンションの将来ビジョン、方針を明確にするという事です。それをマンション憲章として、管理規約に明文化し、各マンションを如何に存続させていくか、という方向性を、区分所有者の合意形成を得て進める事が大切であると考えます。
今回の交流会参加理事の方からも、「うちのマンションでは、建替え実施時期を70年を超える段階と設定し、その10年前より建替え計画の検討をしていく事を明文化している」という意見がありました。
建替え事業には、「絵を描く力」と「実現する力」が必要と言われていますが、「建替えありき」ではなく、長期修繕計画と連動させながらあらゆる可能性を検討し、「マンション維持計画」や「マンション100年憲章」としてまとめておき、管理組合員全員が正確な知識と情報を共有し公明正大に議論をつくす事が重要と考えます。
このことが、建替えの最大の問題である合意形成を円滑に進める事につながるのです。
合意形成に向けては、正確な情報を共有する中で、一人ひとりの事情に向き合い、真摯に解決策を探るといった検討をする中で、コミュニケーションを深めて行く管理組合全体としての取り組みが不可欠であり、あらゆる知恵を総動員して活用していく事で必ず解決策が見つけられるはずです。